【装甲騎兵ボトムズ】第1回:「最低野郎」たちのハードボイルドな世界の魅力にむせる

1980年代

ご挨拶

みなさん、はじめまして。motokoです。

普段は仕事に追われる毎日ですが、夜は数十年前のアニメの世界へ逃避行しています…。

私がこのブログを始めるきっかけになった運命の作品。

それが『装甲騎兵ボトムズ』(1983年)です。

「え、女性がボトムズ?ほんとに?」

と驚かれるかもしれません。

確かに、画面は茶色と緑ばかりで泥臭いし、キラキラした要素はゼロ。

でも、セル画の映像を通して確かに感じる、鉄と油と硝煙の”臭い”やハードボイルドな”質感”に、現代のデジタルアニメでは味わえない衝撃を受けてしまったんです。

語れる友達が周りにいないので(笑)、ここでその溢れる想いをぶつけさせてください。

第1回となる今回は、『装甲騎兵ボトムズ』の作品世界(脚本・構成) を軸として、物語の骨組みや、ハードボイルドな世界観の魅力を紐解きます。

【作品基本データ】装甲騎兵ボトムズ

項目内容
放送期間1983年4月1日 〜 1984年3月23日
話数全52話
制作日本サンライズ
公式サイトhttp://www.votoms.net/

《メインキャスト》 キリコ:郷田ほづみ/フィアナ:弥永和子/ゴウト:富田耕生/バニラ:千葉 繁/ココナ:川浪葉子/ロッチナ:銀河万丈/バッテンタイン:戸谷公次/ゴン・ヌー:玄田哲章/カン・ユー:広瀬正志/キデーラ:郷里大輔/ポタリア:速水 奨/ル・シャッコ:政宗一成/ カンジェルマン:天地麦人/イプシロン:上 恭ノ介/ボロー:緒方賢一

《メインスタッフ》 原案:矢立 肇/原作・監督・構成:高橋良輔/演出チーフ:滝沢敏文/脚本:五武冬史、吉川惣司、鳥海尽三、高橋良輔/キャラクターデザイン:塩山紀生/メカニカルデザイン:大河原邦男/音楽:乾 裕樹/音響監督:浦上靖夫/美術:東條俊寿、岡田和夫、中山益男、宮前光春

本作『装甲騎兵ボトムズ』は、1983年のテレビ放送開始以来、映画やOVA、外伝小説など、40年以上にわたって新作が作られ続けている伝説的な人気シリーズです。サンライズ制作のリアルロボットアニメとしては、あの「ガンダム」と並び、今なお双璧をなす二大巨頭と言っても過言ではありません。

媚びない、飾らない。3分でわかる『装甲騎兵ボトムズ』のあらすじ

主人公キリコ・キュービィ

物語の舞台は、遥か遠いアストラギウス銀河。

ギルガメスとバララント、対立する星域同士による銀河を真っ二つに分けた百年戦争の末期。

ギルガメス軍の一兵士:主人公のキリコ・キュービィは、謎の作戦に参加する。

味方が守備する小惑星リドを強襲するという不可解な作戦に参加させられた彼は、そこで「素体」と呼ばれる軍の最高機密——美しい女性——を目撃してしまいます。

この出会いをきっかけに、巨大な陰謀へと巻き込まれ、自軍からも追われる身となったキリコ。

なぜ自分は追われるのか? あの女性は何者なのか?

戦場から戦場へ、戦争の裏側に隠された恐るべき真実に立ち向かう、孤独な旅が始まります。

脚本の妙:終戦後の世界

監督:高橋良輔さん

ボトムズの脚本(原作:高橋良輔監督)が凄いのは、『ボトムズ』では、ギルガメスとバララントという2つの大国の戦争ではなく、戦争が終わった後の物語がメインとなるところなのです…!

それを象徴するのが、第1話「終戦」というタイトル。

キリコ・キュービィーという帰還兵を主人公にして焼け跡からスタートし、ロボットをキャラクターではなく兵器として描いた初めての本格ミリタリーアニメといって過言ではない。

幼い時から戦争の中で育ち、学んだのは人の殺し方だけ。除隊したキリコは、戦争のトラウマを抱えながら、戦後荒れ果てた社会にいきなり放り出されます。

これまでのロボットアニメで主人公の少年が持つような、陽気でハツラツとした部分は皆無。

無口で無表情な帰還兵のモノローグで進む物語は、まるで古いハードボイルド小説を読んでいるような格好良さがあります。

一人の兵士の「リハビリ」、そして「自分が何者なのか」を辿る物語。

戦場の中で失った人間らしさを仲間との出会いによって取り戻していく人間ドラマでもあるのです。

※決して、初恋の女のケツを追っかけてるだけのアニメではない(笑)

ボトムズ制作において影響を受けたとされる作品

下記の作品が好きな方は、ボトムズにハマる可能性があります…!

「ブレードランナー』('82)、『マッド・マックス』('79)、『エイリアン』('79)、H.R.ギーガーの画風、『2001年宇宙の旅』('68)、『バトルトラック』('82)、『地獄の黙示録('79)、『ランボー』(第1作)、「ベトナム戦記」、『タクシードライバー』

「こっちが本編!?」 伝説の次回予告

声優:銀河万丈さん

ボトムズを語るなら、銀河万丈さんのナレーションによる次回予告は欠かせないですよね…!

本編と同じ位、次回予告が気になって仕方がない体験は初めてでした(笑)

この作品に出会って、当たり前ですが、次回予告までが作品なんだと改めて気付いたのです。

詩的でハードボイルドな言葉の連打に、本編を観る前から鳥肌が止まらない…!

最後の一句を聞くためだけに視聴しても損はありません。ぜひまだの方は見てください!

個人的には、一番有名であろう第2話「ウド」で放映された次回予告が大好きです。

第2話「ウド」
食う者と食われる者、そのおこぼれを狙う者。牙を持たぬ者は生きてゆかれぬ暴力の街。あらゆる悪徳が武装するウドの街。ここは百年戦争が産み落とした惑星メルキアのソドムの市。キリコの躰に染みついた硝煙の臭いに惹かれて、危険な奴らが集まってくる。次回「出会い」。
キリコが飲むウドのコーヒーは苦い。

motoko
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コスパさんから販売されたマグカップを今でも愛用しています!

ボトムズの世界観の3つの「見どころ」

まだまだ語りたいことはあるけれど、私なりに、ボトムズのストーリーの「ここがヤバい!」を、3つに絞ってみました。

主人公キリコの圧倒的な「静」

キリコはとにかく喋らない…!主人公なのに、喋らない…!!(セリフより、ナレーションの方が多い疑惑)
でも、だからこそ、たまに発する極端な一言にも重みがあって良い。

この「静」こそが、ボトムズという”作品の湿度”を決定づけているのです。凄い。そして、郷田ほづみさんの低音ボイスが、セル画の深い影とマッチして、最高にセクシーなんです。

高橋監督はキリコが、追い詰められた状況を口で説明する(例:『囲まれた!』と言う)ような描写を意図的に避けたといわれています。

物語の中でキリコは、過酷な状況を当たり前のこととして受け止めているプロの兵士なんですね。

脚本・演出において、このキャラクターの徹底した「語らぬ演出」こそが、キリコの孤独とプロの兵士としてのリアリズムを高め、視聴者の想像力を刺激していて痺れます。

この「寡黙な主人公」というスタイルは、後の高橋良輔監督作品『蒼き流星SPTレイズナー』のエイジにも受け継がれており、とても大好きな作品なので、ゆくゆく記事にします(笑)

「使い捨て」のロボット:アーマードトルーパー(AT)

アーマードトルーパー(AT)とは、ボトムズの世界に登場する、全高約4mの人型兵器。
(「機動戦士ガンダム」でいうところの「モビルスーツ(MS)」)
数あるATの中でも、主人公キリコたちが所属するギルガメス軍の主力制式採用機が、あの有名な「3つのレンズ(ターレットレンズ)」がついた緑色の機体、スコープドッグです。

通常、ロボットアニメにおける主役機は、玩具を売るための「商品」としての顔も持っています。

子供たちが憧れるように、強く格好良く戦い、パワーアップを繰り返し、主人公とともに唯一無二の「特別な存在」として描かれるのが当たり前でした。

しかし、『装甲騎兵ボトムズ』に登場するATには、そんな商業的な甘い幻想は一切ありません。

高橋監督は過去のインタビューで、「『ボトムズ』ではロボットそのものが一兵士という単位に過ぎないというのが特徴で、兵士というのは使い捨ての工業製品みたいなもの。ATはそういう立場に貶められた、主人公の制服のようなもの」とも語っています。

また、スポンサーや営業からは、「メカにはちゃんと赤青白を使ってよ!」みたいなコトは、一切言われた覚えがなかったとのこと…!

事実、当時のスポンサーのタカラ側は、最初から企画を面白がってくれ「ミリタリーモデルとして売りたいから、ジープのような軍用色でいい」と快諾したと言われています。

ボロボロになれば戦場で平気で乗り捨て、敵の機体を奪って平然と戦い続ける。

当時としては異例のバックアップ体制が、この徹底した兵器感を生み、当時の、そして現代のアニメ界においても異質で、たまらなくかっこいいのです。

主人公を際立たせる「切り替わる舞台装置」

本作全52話は、大きく四つの章に分かれています。特筆すべきは、章が変わるごとに舞台も、ジャンルも、そして「空気の色」さえもが劇的に替えられていく点です。

<四つの舞台>

  1. 煤けたネオンが光る地下階層都市での抗争(ウド編)
  2. 密林と湿地に覆われる「緑の地獄」での泥臭いゲリラ戦(クメン編)
  3. 酸素ボンベ無しでは生きられない荒廃した星での絶望的な消耗戦(サンサ編)
  4. そして高度な文明の残骸が眠る砂漠の惑星(クエント編)

メインの目的は、1クールごとに物語の決着をつけるテレビ的な視聴者を飽きさせないためのギミックであったでしょう。

ただ同時に、舞台(シチュエーション)を極端に変えることで、主人公キリコのどんな状況でも『生き延びてしまう異常さ』が、彼がただの人間ではないこと(異能生存体への伏線)へ繋がっているのではないでしょうか?

どんな過酷な『未知の戦場』に放り込まれても、キリコはただ一人の兵士として、同じように引き鉄を引き、生き残る。

どんな窮地に陥っても絶対に死なないという、その中心に立つキリコの「特異体質」がより際立つ

この丹念に描き分けた「四つの世界」は、キリコという男の孤独な輪郭と性質を、最も鮮明に描き出すための壮大な舞台装置だったと思うと、また見方が変わりませんか?

今後の連載について:5つの視点で深掘り!

いかがだったでしょうか?リアルタイム世代じゃないからこそ言いたい。
「昔のアニメでしょ?」と食わず嫌いするのは、あまりにも勿体ない!

今年は押井さんによる新作ボトムズもあるので、今こそ、みんなボトムズを見る時だ!

今回の第1回を皮切りに、本ブログでは『装甲騎兵ボトムズ』をはじめとするセル画アニメを、以下の5つの切り口で深掘りしていく予定です。

次回は、「第2回:鉄の臭い立つ作画編」をお届けする予定です。

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